南信州の冬の風物詩、軒先に吊るされた美しいオレンジ色の「柿すだれ」
そこから生まれるのが、とろけるような食感と上品な甘さで「干し柿の王様」と称される**市田柿(いちだがき)**です。
長野県の南に位置する飯田・下伊那地域に古くから伝わる伝統の銘菓であり、知る人ぞ知る極上のお取り寄せグルメ。
この記事では、市田柿がなぜこれほどまでに特別なのか、その秘密から、美味しい食べ方、そして現地南信州での楽しみ方まで、余すところなくご紹介します。
1. 市田柿ってどんな柿?品質を保証する「GI登録」の秘密

国が認めた高品質の証「GI」とは?
市田柿の高品質の秘密は、国の地理的表示(GI)保護制度に登録されていることにあります。
GIマークは、その産地ならではの品質や社会的評価を持つ特産品の証。
市田柿は、南信州の気候と伝統製法でつくられた、国が認めた信頼のブランド品であることを意味します。
「あんぽ柿」とは違う!市田柿は伝統の「ころ柿」


干し柿には水分を多く残した「あんぽ柿」と、水分を30%程度まで抜き白い粉を吹かせる「ころ柿」があります。
市田柿はこの「ころ柿」に分類され、表面の雪のように美しい白い粉(ブドウ糖の結晶)と、もっちりとした独特の食感が特徴です。
「生」の市田柿について
市田柿は、もともと強い「渋柿」の品種であり、そのまま生で食べることはできません。
サイズが小さく種が少ないのが特徴で、この渋柿を冬の寒風と職人の技によって甘い干し柿へと変化させているのです。
2. 南信州の伝統の技:美味しさの秘訣は「柿すだれ」と「川霧」
壮観な冬の風物詩「柿すだれ」の作り方
市田柿の製法は、まさに伝統工芸です。
皮をむいた柿を紐でつるし、軒先にずらりと並べるのが、冬の南信州を彩る「柿すだれ(柿のれん)」。
乾燥の途中で、職人が丁寧に「手もみ」を繰り返します。
これが、市田柿のねっとりとした食感と、表面に白い粉(ブドウ糖)をきれいに吹かせるための重要な工程です。
南信州の風土が育む味わい「天竜川の川霧」
美味しさの鍵を握るのは、地域を流れる天竜川から立ち上る「川霧」。
この霧が乾燥過程で適度な湿度を与えることで、柿が一気に乾燥しすぎるのを防ぎ、時間をかけてじっくりと甘さを凝縮させます。
【安全性について】
製造工程でカビや雑菌を防ぐために行われる硫黄くん蒸(二酸化硫黄)は、食品添加物として認められており、残留量は食品衛生法で厳しく基準が定められていますのでご安心ください。
3. 栄養もたっぷり!市田柿の絶品アレンジレシピ

嬉しい栄養価と旬の季節
市田柿は、食物繊維(便秘改善)、カロテノイド(抗酸化作用)、カリウム(むくみ対策)を豊富に含む健康的な食材です。
- 季節(旬):11月下旬〜1月頃に収穫・製造され、12月頃から年明けにかけてが最も美味しく楽しめる時期です。
市田柿の3つの楽しみ方(和・洋・伝統)
1. 【洋風アレンジ】とろける「ミルフィーユ」
市田柿を横半分に切って開いた間に、クリームチーズやマスカルポーネを挟みます。
ワインに合わせるならゴルゴンゾーラもおすすめ。
冷凍の市田柿ミルフィーユも直売所で人気です。
2. 【和風アレンジ】爽やかな甘さの「柿なます」
地元ならではの知恵として、おなますの人参の代わりに市田柿を使うアレンジがあります。
大根と細切りにした市田柿を甘酢で和えると、柿の自然な甘さが活きた、上品で爽やかな風味のなますに仕上がります。
3. 【伝統の味】そのままお茶請けに
日本茶やほうじ茶と共に味わうのが、最もシンプルで贅沢な楽しみ方です。
お酒好き必見!地元・喜久水酒造とのペアリング
市田柿の濃厚な甘さには、キレの良いお酒を合わせるのがおすすめです。
特に地元、飯田市の老舗蔵元「喜久水(きくすい)」のお酒は、旅の思い出の品として最適です。
- 【王道】辛口の日本酒: 『本醸造 金泉 辛口』や『㐂久水 吟醸』など、キレのある辛口の銘柄がおすすめ。柿のねっとりとした甘さを、日本酒のスッキリとした辛さが洗い流し、飽きさせません。
- 【変わり種】スパークリング: 『スパークリング清酒 あわわ』などの炭酸の爽快感も、柿の食感を軽やかにしてくれます。
喜久水が気になった方は是非、ホームページをご覧ください。
4. 南信州の旅を計画!購入スポットと「柿すだれ」のヒント
確実に入手するなら「JA系列の直売所」へ
南信州を訪れた際に市田柿を確実に手に入れたいなら、JA系列の農産物直売所が最もおすすめです。
高品質のGI登録品に加え、霧箱入りの贈答品や冷凍の市田柿ミルフィーユといった人気商品も扱っています。
購入のヒント: 旬の時期は売れ行きが良いため、午前中の早い時間帯に訪れることをおすすめします。
各店舗の正確な営業時間や定休日については、お出かけ前に必ずご確認ください。
JA直売所【店舗別詳細情報】
JA直売所を訪れる際は、以下の情報を参考にしてください。
| 店舗名 | 主な取り扱い/特徴 | 実用情報 (営業・定休日・駐車場) | アクセス・地図 |
| りんごの里 | 市田柿(贈答・自宅用)、地域の新鮮な野菜、リンゴなど特産品が豊富。 飯田ICの近くでアクセス良好。 | 営業時間: 9:00〜18:00 定休日: 3月〜12月は無休(1月・2月は水曜定休) 駐車場: 有り | 地図を見る 長野県飯田市育良町1-2-1(飯田インター前) |
| およりてファーム | 市田柿、地元の農産物、加工品など。 ドライブの途中に立ち寄りやすい飯田市内の店舗。 | 営業時間: 9:00〜18:00 定休日: 不定休(正月三が日のみ休業の可能性あり) 駐車場: 有り | 地図を見る 長野県飯田市鼎東鼎281 |
| もなりん | 松川インターより約3分。 市田柿の販売に特に力が入れられる店舗。 | 営業時間: 9:00〜18:00(※冬季は17:00までの情報あり) 定休日: 2月〜4月頃は冬季休業(市田柿シーズン後半は注意) 駐車場: 有り | 地図を見る 長野県下伊那郡松川町大島2181-1 |
価格帯とギフト情報
| 商品の種類 | 特徴と価格帯の目安 |
| 贈答品(化粧箱・霧箱入り) | 品質最高級。主にギフトとして。5,000円〜10,000円程度と高めです。 |
| 自宅用(簡易包装) | 包装を簡略化。ご自宅用やお試しに。2,000円〜4,000円程度。 |
【ギフト検討の方へ】
直売所では発送サービスが利用できる場合が多いです。
贈答の際は、賞味期限(日持ち)や発送可能期間を店舗でご確認ください。
井伊直虎ゆかりの寺!松源寺の特別な「柿すだれ」

高森町にある松源寺(しょうげんじ)〔松源禅寺〕は、旅の目的となる特別な柿すだれ風景と、深い歴史を同時に見られるスポットです。

- 歴史的背景:
- 松源寺は、大河ドラマの主人公・井伊直虎の許嫁、亀之丞(後の井伊直親)が、今川氏に命を狙われていた幼少期に、この市田郷で約十年余りを過ごした井伊家ゆかりの寺です。
- 亀之丞はここで文武両道に励み、故郷を偲んで**「青葉の笛」**を吹いたと伝えられています。
- 絶景の理由:
- 一般の農家の軒先とは異なり、こちらのお寺では鐘を鳴らす台(鐘楼)に柿すだれが吊るされるという、非常にユニークで美しい風景が見られます。
- (住職様より掲載承諾済み)

- 時期:
- 柿すだれの見頃は11月中旬頃から12月中旬頃です。(つるされる期間についてはご確認をお願いします。年度によって期間にはばらつきがあります。)
- アクセス情報:
- 所在地:長野県下伊那郡高森町下市田4389
- 駐車場あり
- 松源寺へと続く道は道幅が狭くなっていますので注意が必要です。
一般の「柿すだれ」の景色を楽しむためのヒント
松源寺以外にも、地域の冬の風景として柿すだれは見られます。
- 見られる場所: 主に国道153号線沿いの高森町方面などで、一般の農家さんの軒先に多く見られる可能性があります。
- 重要な注意点: 柿すだれは一般農家さんの敷地内にあります。個人の敷地や農作業中の場所への無断立ち入りは絶対に避け、車を停める際は交通の妨げにならないよう、地域への配慮をお願いいたします。
白い粉(もどり)の正体と保存方法
表面の白い粉は、糖分(ブドウ糖)の結晶であり、美味しさの証です。
温度が15℃以上になると「もどり」という現象が起こるため、購入後は涼しい場所(10℃以下)または冷凍保存をしてください。
まとめ:南信州の旅で伝統の味と風景に出会う

いかがでしたでしょうか。
この冬はぜひ、GI登録された高品質の市田柿を、南信州を訪れて柿すだれの美しい風景と共に、本物の味をご堪能ください。














